死にたがりの君と知りたがりの僕。


ひらりひらりと桜が舞う

薄紅色の花弁が



風に吹かれて舞い散る



未だ白昼夢から抜け出せない君に今日も逢いに行く




203号室、君の病室はとても日当たりがいいから

木漏れ日に照らされながら 今日は君と何を話そう?

























僕は今日も彼女の病室の前に来ていた。


気付けばいつもこの扉の前に立っているのだ。


たまたま妹が入院したこの病院で、僕は彼女に逢って、恋をした。




最初に見たきっかけは、はたまたまこの病室を通りかかっただけのことだった。



妹の手続きを済ませた帰り道。
少しばかり開かれた扉から、何ともいえない風が吹いてきて。

決して不快なものではなく、逆に撫でられるようなものだったので、僕は散らばる髪を抑えながら室内を盗み見た。



そこに、君はいた。


白い病室、風に吹かれて。

真四角の部屋に、ただ一人で窓の外を眺めていた。

僕も連られて見てみれば、どこか神々しさまで感じるような桜が




風に遊ばれ、はらはらと舞い散っていた。



斜めからの表情しか窺えなかったが、その儚さに僕は手を伸ばしてしまった。

今考えれば、とても軽率な行動だったと反省している。
だが、あの時は今伸ばさなければ彼女は消えてしまうと、あの桜と共に散ってしまうと


本能が知らせていた。






ガタッ


「…だ、れ…?」



まるで、鈴音の様な小さな声に、ふと我に返った。



「あ…、いや、す、すまない…その、僕は決して怪しいものではない」



言い訳から入るあたり、自分が情けなくなってきた。
てっきり出ていけと言われるのを覚悟していたが、予想に反して、相手は相槌を打ってくれた。



「…はぁ」

「僕の名は皆城総士と言う」

「総、士」

「そうだ」

「おれは、一騎です…真壁一騎」



ぎこちなく、首を傾げてよろしく、と言った。














それが、出逢い。