「ただいま…」
数年振りに還った島は、変わっていなかった。
ただ一つを除いては。
僕の知っているその島にはもう既に、僕の知っているあいつの姿は無かった。
北極の戦いの後、一騎に握り締められたままのジークフリートシステムの中から
自分が零れていくのが解った。
でも、僕はどこか笑っていたんだ。
それは、これから始まる誰とも隔離された空間で会話し、自己を形成する長い間を覚悟する最後の感触が
最後の会話が一騎で良かったという安堵感。
だから、落ちて風に消える僕に泣き叫ぶ一騎を知りながらも、僕は。
どこか懐かしい空気に包まれた一騎の家には、ノックをしても何の応答もなくて。
変な焦燥感に駆られた。
指令がいないのは解る。
彼は立場からしてアルヴィスだろう。
あそこは対フェストゥム以外にも、島のシステムを管理運営している。
でも、一騎は‥‥?
何故、誰も出ないんだ。
心臓の音が早鐘の様に鳴るのが嫌な位解る。
脈打つ鼓動を叱咤し、何とか落ち着かせ取り敢えず一騎が居そうな場所を見当してみた。
一人山や鈴村神社等へ行ってみたが一騎の姿は何処にもなく。
最後の望みのアルヴィスへと向かった。
道中、不思議と誰とも会わない。
元気に遊ぶ小さな子供とはすれ違うが、かつての仲間達には今まで会っていない。
この狭い島の中で。
そんな違和感もアルヴィスに行けば何か解るだろうと然して気にしないでいた。
島を包む妹は、おかえり、と言った後から、何も返してはくれない。
山を下りて麓に出ると、そこで漸く見知った人物に会った。
遠見だ。
僕の存在に気付くと、何時も輝いていた瞳に涙を一杯に浮かべ走ってきた。
「皆城くん…!あなた、どこに行ってたのよ!!」
悲痛な表情で叫びだす遠見に、僕の嫌な予感は次第に膨張していって。
「…っ…ごめん、せっかく帰ってきたのに…。まずはおかえりなさい」
「ああ…」
「いつ帰ってきたの?一騎君の所へは行った?」
のっけから質問攻めで、僕は多少身じろいで対応した。
「帰ったのは今さっきだ。一騎にはまだ…どこにいるか知ってるか?」
「早く会いに行ってあげてよ‥‥一騎くんが会いたがってるのは、あなたなんだよ‥‥?」
「え?」
→