「どうりで冷えているな」

「総士も、こっち入って」



毛布を少し開けて掛けた。



「おれ、つぎもまた、おまえらにあえる、きがする…んだ…」



だんだん意識が持っていかれてるのだろう。
何度も目を瞑りそうになりながら途切れ途切れに話した。



「また、逢えるさ…3人で…」

「そ…したら、ほんとに、いっしょ…くら、そ……」

「勿論だ…」



一騎の言葉に嬉しくて、もっと言葉で返したいのに、なんだか僕も瞼が落ちてきて。



「ありが、と……ふた、り、だい…すき…」









最後の最後で、微笑んだ。




「そぉ、し…そ、しもつば、き…もしあわせ、な……」




意識が遮断される直前、一騎が呟いた。



































































































何故か目が覚めた。


隣には微笑んだまま眠る一騎。








「……やってくれたな」



呟いてもあの笑顔は返っては来なかった。



瓶のラベルはちゃんとペントバルビタール配合剤と書いてある。



きっと僕のだけビタミン剤やらと少しの睡眠薬だったのだろう。


お前の優しさは、時に本当に残酷で。







残されてしまった。


この世界に。


ああ、見たくも無い朝が来た。






眩しすぎる朝は諦めを誘い


僕は全てを曝け出して この身を委ねる




握り締めた冷たい指、君は相変わらず微笑んでいて




僕はかける言葉もなく 景色は滲む










始まれば何れ終わる綺麗事などいらない



せめて君を暖めたい









ほんの少しの時間を与えて、神様。





憂鬱な目覚めは



隠せない絶望をまざまざと映し出して







それでも、お前の愛した世界は美しくて








多分、物心付いてから初めて泣いた。


みっともなくも止まらない涙が僕と一騎の亡骸を濡らした。




何度問い掛けても反応はなく


いつもみたいに、眠ってるみたいだった。





なのに、どうあっても君の声が聞けない。


目が見れない。


鼓動がない。




どうしようもない不安と焦燥感に駆られていると、足音がした。






「そぉし…ッ!一騎が…一騎がぁ!」

「乙姫…」




それが妹だと確認するのに数秒時間が掛かった。



…何故、此処に?










廃屋に、風が走った。


始めて君を見た時の、あの風が。






― 乙姫を守れ ―





そう言われたきがした。






ああ、あの風はやっぱり君だったんだね。


僕は始めから惹かれていたんだ。君に。





こんな運命も


受け入れろと。















「一…、騎?い、ゃぁああー!一騎、かず…ぅわぁあん…な、なんで…なんでかずきぃ!!」



大きな瞳から溢れる涙を拭いもせず、駆け寄って



骸を抱きしめた。





「く…っぅそつき……いっしょ、くらすって…げんきっ…ぅう…なる、て…言った、のにぃ!」

「乙、姫…」

「そぉし!なんで一騎は寝てるの?起きてくれないよぉ…」

「乙姫っ!」






しがみ付いてきた妹は、とても小さかった。




「置いてかないでよぉ…やだよ…ぉ…」




一騎が昨日最期に飲んだ水よりも、今日たくさんの水が流れた。








「お前がいないのに…幸せなんて……なれるか…ッ





僕は絶対、……忘れてなんかやらないからな」










雪が止み、朝焼けが差し込む廃屋で僕は呟いた。































― キラキラした夢の島  一緒に行こう ―













































≪ こんなろくでもない世界で、逢えてよかった。





















終。