『あれっ倒れちゃった』



持ったお茶缶を胸の位置まで下ろしキョトンと倒れ一騎を見た。



『そーしー!一騎倒れちゃったよー!』



出来ることなら抱き起こしてやりたいが自分の透ける体と意識のない体では生憎無理な話しで。





『総士ってばぁー』

『なんだ騒々し…』



奥から気怠げにもう一人出てきて倒れてる人物を見て途端に顔色を変えた。



『一騎!?どういうことだ乙姫っ』



霊同士で触れる為遠慮なくがくがくと乙姫と呼ばれた少女の肩を揺すった。




『ちょっ…か……やめてって言ってるでしょ』



急に声のトーンを極限まで下げ冷めた目で総士を見遣った。



『ハイ…』



てゆーか一回しか言ってないとは口には出せず。



『まったく。取り乱すなんてらしくないよ?』



先程の絶対零度が嘘のように可愛らしく頬を膨らませる。



『まだ対面も済んでないのにそんな血相変えちゃうなんて…本当に気に入ったんだね』

『悪いか』

『全然悪くないよ。あたしも好きだもん』



ふふ、と楽しそうに笑った。



『ただ…』

『どうした?』



少し間を置いて。



『あたし達の第一印象、最悪だろうけどね』



二人共静かに動かない一騎を見る。



『………まあ…な』

『一騎が起きるまで少しでも印象良くなる様な言い訳でも考えてよっか』

『…ああ』

『そんなに落ち込まないで、総士。あたしもちょっと予想外なんだから』

『別に落ち込んでない』

『はいはい。分かったから涙拭いて顔上げて笑う練習して』

『な、泣いてない』






ぐし、と袖口で目元を乱暴に拭った。