「…… だ…」
「え?」
「汚いんだ…俺を作っているもの、全てが汚いんだ…」
「…」
「…あいつは綺麗だった……何よりも綺麗だったのに…全部、俺が壊したんだ…」
「、」
「あいつはみんなを守ることしか考えてなくて……っ自分のことなんてちっとも気にしないでさ。
結局あいつの左目も、あいつ自身も何もかも俺が奪ったんだ…」
パァン
一騎が吐き出す言葉を、乾いた音が止めた。
「いい加減に目を覚ましてよ!」
「……」
「皆城くんは嬉しかったんだよ!?一騎くんが自分を解ろうとしてくれたことが!だからまたもっとあたし達を守ろうと頑張ったのっ
一騎くんは何も悪くないじゃない!どうしてそんなことも解らないの!?」
「解ってるっ…!」
「そうだよね。本当は全部解ってるんだよね?
でも頭では解ってても心が追い付かない…それは逃げてるのと同じだよ?」
嗚呼、頭が割れそうだ。
「うるさい…っ出てってくれ!」
酷く痛くて。
いっそ割ってしまえたらどんなに楽か。
「一人置いていかれたことが怖いんでしょ?……もう逃げないでよ…!そんなんじゃ皆城くんに申し訳ない…じゃない…」
頼むから、俺の逃げ道を奪わないで。
「頼むから出てってくれ…!」
「…、お大事に」
髪を振り乱して錯乱する一騎に、これ以上混乱させてはいけないと苦しそうに眉根を寄せながら病室を後にした。
「とぉみ…、ごめん……とおみはわるくないのに…」
顔をうつ伏せて静かに頬を濡らした。
「お前がいないのに…何で俺、まだ生きているんだろう……」
「意味なんて、ないのに」
「俺、お前のこと好きだったよ」
「不器用なくせに一人で馬鹿みたいに頑張ってるお前も」
「でも本当は誰かに解って欲しいと思うお前も」
「淋しいのを、苦しいのを誰にも言えないお前も」
「お前のぜんぶが、すきだったんだ…」
軋む様な頭痛に、眠気が伴った。
「…、 、ね、そぉ…… ‥‥?」
「‥…、…ぁ… 」
言いたい言葉も紡ぎ出せず、本格的に意識が途切れる瞬間、優しい風がまだ乾かぬ一騎の頬を撫でた。
≪ 俺の心臓なんて、止まっちゃえばいいのに