ねぇ どうしようもなく痛いんだ。





鳴り響く、鐘。








まただ。


真矢は急いで病室の扉を開けた。





「一騎くんっそんなことしても皆城くんは戻らないよっ!?」




叫ぶと同時に一騎の左手が閉めようとした窓を、無理矢理その手から離させた。


今日は窓で右手を失くそうとしたらしい。


一騎は部屋にあるもの、何でも使っていつも右手を消そうとしていた。






「だってこの右手、何も掴めないんだ……落ちていくあいつさえも。





なら









こんな右手、必要ないだろ?」








相変わらず綺麗に笑うのに。






「要らないいらないいらないいらないいらないっ!」








いや、哂うか。




「一騎くんっ!」



「こんな役立たずな右手なんて無くなればいいんだっ!なぁ、遠見もそう思うだろ!?なんでまだあるんだっ………!?
俺はっ…あいつを守りたかったんだ!傷つけたかったわけじゃない…っなのになんで……っ














…傷つけることしか出来ないんだ………」



「一騎くん……」












「…… だ…」


「え?」





「汚いんだ…俺を作っているもの、全てが汚いんだ…」


「…」







「…あいつは綺麗だった……何よりも綺麗だったのに…全部、俺が壊したんだ…」



「、」






「あいつはみんなを守ることしか考えてなくて……っ自分のことなんてちっとも気にしないでさ。







結局あいつの左目も、あいつ自身も何もかも俺が奪ったんだ…」





パァン






一騎が吐き出す言葉を、乾いた音が止めた。



「いい加減に目を覚ましてよ!」



「……」



「皆城くんは嬉しかったんだよ!?一騎くんが自分を解ろうとしてくれたことが!だからまたもっとあたし達を守ろうと頑張ったのっ
一騎くんは何も悪くないじゃない!どうしてそんなことも解らないの!?」




「解ってるっ…!」




「そうだよね。本当は全部解ってるんだよね?
でも頭では解ってても心が追い付かない…それは逃げてるのと同じだよ?」










嗚呼、頭が割れそうだ。








「うるさい…っ出てってくれ!」








酷く痛くて。


いっそ割ってしまえたらどんなに楽か。







「一人置いていかれたことが怖いんでしょ?……もう逃げないでよ…!そんなんじゃ皆城くんに申し訳ない…じゃない…」






頼むから、俺の逃げ道を奪わないで。






「頼むから出てってくれ…!」











「…、お大事に」




髪を振り乱して錯乱する一騎に、これ以上混乱させてはいけないと苦しそうに眉根を寄せながら病室を後にした。














「とぉみ…、ごめん……とおみはわるくないのに…」






顔をうつ伏せて静かに頬を濡らした。














「お前がいないのに…何で俺、まだ生きているんだろう……」













「意味なんて、ないのに」
















「俺、お前のこと好きだったよ」















「不器用なくせに一人で馬鹿みたいに頑張ってるお前も」















「でも本当は誰かに解って欲しいと思うお前も」














「淋しいのを、苦しいのを誰にも言えないお前も」


















「お前のぜんぶが、すきだったんだ…」














軋む様な頭痛に、眠気が伴った。















「…、    、ね、そぉ……    ‥‥?」































「‥…、…ぁ…  」









言いたい言葉も紡ぎ出せず、本格的に意識が途切れる瞬間、優しい風がまだ乾かぬ一騎の頬を撫でた。






























≪ 俺の心臓なんて、止まっちゃえばいいのに