振り上げる刃物




飛び散る赤い血飛沫















ああ




ぼくはなぜこんなことをしてるんだっけ






ああ







そうだ







どうしても手に入れたかったんだ











不安定要素のない、確実なまでの事実を。












だから 力ずくでも手に入れたいと思った













きっと君はいつもの笑みで包んでくれるんだろうけれど








実際、君は変わらず僕の傍に居てくれたね。














でも、こわいんだ。







不安定は不確定で






恋は狐疑的で。














根本的に歪んでるから










みっともない怯えから全てを疑い出だしてしまう。




僕の悪い癖









そうなってしまうと単純で。





何が善で何が悪なのかも もう解らないし、どうでもいい。
















じわりじわりと染み込む赤


つい先程まで君の胎内で肉体を動かしていた液体




面白い位に綺麗に広がるから


嬉しくて、つい刺さっている刃を縦横無尽に動かした










あぁ。やっぱり君は血まで綺麗だったよ






それに見惚れながら左胸の傷口から静かに流れる血を人差し指で拭いとって




君の唇に紅を引く




虚しいくらい青白い君にとても似合っているよ





堪らなくて、君に接吻けを。



もう舌を絡め返してはくれないけれど


物言わぬ君を、ただ 抱きしめた。



力無く投げ出されている腕を自分の其れと重ねて

うっとりと恍惚に浸る。







何も 誰も見ない僕だけの君



















はて、



これで僕は安心なのか?



















虚しくて嬉しくて悲しくて楽しくて








愛しくて、可笑しくて 笑い出してしまいそう









夜の帳がおりた黒の下


微笑みながら無言で君を抱く僕


その虚ろな目に


今は何も映ってはいない























僕も。

















その穴を埋める様に君に話しかけ






髪を撫でる。








君の赤が



僕にまで流れてきて






侵食。













最後に傷口を撫でて


もう一度君に接吻けを








『今 僕もいくよ』





君を貫いた銀で



僕の胸も











でも自分では一発で致命傷は無理だったらしく、やっぱり可笑しい位の痛みと幸福感の中、僕の意識がまだそこに居た。









君と同じ様に流れ出す僕の赤と




君の赤を交わらせて




最後の傑作を創ろう

















完璧なまでの失敗傑作、終焉愛








僕はまた笑って




君と手を繋いだ













君が死んで、僕も死ぬ。


君が笑う、夢を見る。







ごめんね、道連れにしちゃって



でも 優しい君だから


こんな僕でもきっと許してくれるよね?





辿り着く先はサンクチュアリ

















目を閉じて





最後の呪文を口のする










『神さま、さようなら』