ガリリ
蝕む音は何時もすぐそこまで来ていて。
知らなければよかったなんて、甘い戯言。
ガリリ
今日も苦い薬を噛んで痛みを殺します。
この間まではみんなが笑いあっていた教室に、今は一騎一人だけだった。
翔子 目の前で散った儚い白い鳥。
甲洋 いつも誰にでも優しかった彼も広い海に。
咲良 負けん気が強かったが、不器用な優しさを見せてくれた。
衛 少しだけ幼さを感じさせていたのに、誰よりも強くあった。
騒がしい筈の声が、聴こえない。
自分を賭ける憂鬱なあの声さえも。
誰も居ないのだから当たり前なのに、酷く寂しさを感じた。
茜差す窓から、あの作り物の空を見た。
ファフナーで外へ出た時と、何ら違いは感じさせないのに。
今は、あの透明の壁が忌々しい。
この箱庭の楽園は、自分は、結局何を守っているのだろう。
大切な物が全部手の中から擦り抜けていくのを、ただ感じるだけで。
結果は何か変わっただろうか。
定期時間に薬を飲んで生き長らえる自分。
ここに繋ぎ止める、枷。
アレに乗って、まだ戦えと無言で期待される重荷。
噛み砕く音だけが自分を確かめる方法。
みんな、馬鹿げてる。
早くそっちへ連れてってと空に手を伸ばしても
空廻った腕が空を切るだけで。
嗚呼。
こんな日常なら、知らなければよかった。
≪ それでも僕等は知らなければならなくて。