「あの時」
「え?」
唐突に、彼は話し出した。
「お前が島を出て行った時、すぐに慣れると思った」
「―、そうか…」
誰に何を言われても
幾ら咎められても、何も言い返せないという事は自分が一番良く解っているつもりだから。
「でも、駄目だった」
その言葉に総士の方へ振り向けば、彼は一騎を見ている様な、違うものを見ている様な酷く曖昧な感じだった。
「違ったんだ。何度もそう思い込もうとしたが…時間が経つに連れ日が経つに連れ違和感ばかりが膨らんだ」
「ごめん…」
「何故謝る。僕の為に出て行ったんだろ?ならばそれは意味のある行動だ」
一応表情は微笑んでいるが、そこには事務的な、どこか淡々としたものがあった。
きっとまだ、心は俺を見ていない。
「…。僕にはその違和感が何だか解らなかったんだ。でもずっとそれが蟠ってて…でも、そんな時にモルドヴァでの映像が入った。
そこでお前は一点の曇りも迷いもなく戦っていたよ。
ねぇ、なんで?僕だけ。もどかしいままで。狡い。どうしてくれるわけ?」
「総士、お前…」
「感情が巧くコントロール出来ないんだ…こんな事、前は何てことなかったのに」
かける言葉が見つからないとはこの事だろう。
決して怒っている声色では無いからまた性質が悪い。
それは、その出来事から随分たった後の事だった。
≪ なにかが おかしい ≫