「キラさん」

「んー?」

「ほんとに連れてくんですかー?」

「うん。もちろん」





結局、渋って腰を上げないそれをキラは肩に抱えてアジトへと向かっていた。




「だって持ち帰って情報聞き出さないと。それに死んでる癖にやたら挑戦的な威嚇する様なこの目が気に入ったよ」

「自分の好みですか…」

「なにー文句あるのシン?」

「イエイエないですよー。トップの言うことに口出す程命知らずじゃないですし」

「聞き分け良くてよろしい。それに可愛い顔してるでしょ?」





立ち止まりほら、とシンの方に荷物の顔を見せる。
















ぷい、と反対方向に顔を逸らしてしまう。






「キラさん、こいつ一人じゃあるけない位衰弱してる癖にまだ反抗的ですね」

「あっはっは!面白いねぇ」

「全然面白くないですよ」

「えー?これでこそ拾い甲斐があるってもんでしょー。それに」

「なんです?」

「抱きつくフリしてさっきから僕の首に隠し刃当ててんの」

「はぁ!?」

「ちょっと、なにをのんびり言ってんだこの人的な目で見るのやめてよ」

「一字一句間違えないで解るならもっと態度ってもんがあるでしょう」

「だって。今ここで下手な事すれば間違いなく僕の頚動か喉は掻っ切られるだろうけど、大人しくしてるし。多分生き延びることを最優先にして、例え敵地でも回復してもらってから何かするつもりなんじゃないかな。合ってる?」

「………」

「腐ってもウルドですねぇ」



無言を肯定と取ったシンが焦るより関心した様に呟いた。






「ここまでバレてんだからちょっと位口開いてもいーんじゃない?」

「………」

「強情だねぇ。そんなにまでして生き残りたい理由って何?」

「僕等コーディネーターの反抗勢力の戦闘種族アルヴィス。その中の精鋭部隊であるウルド。そして君はマスター型」

「マスター型ってなんです?」

「ああ、シンはこの話が公になった時はまだザフトに入ってなかったもんね」



また歩き出した。



「アルヴィスの中には先天的な能力を持つ者がいるらしいんだ。その種類も様々でコアギュラ型スフィンクス型アルヘノテレス型グレンデル型スカラベ型プレアデス型リヴァイアサン型がいる。総称してワルキューレって言うんだけどね。中でも最も最強と言われるのがこのマスター型だよ。戦闘技術に長けてて同化、読心能力もあるし、何より一族の要のコアと最も深い部分で繋がってる存在。尤も、マスター型が生まれるのは何百年に一人って位貴重だって聞いてたけど…」



スラスラとよくも噛まずに言えたものだと思う。



「めちゃくちゃな奴ですね…。続け質問で悪いんですがそのコアって何ですか?」

「アルヴィス全てに共有できる至高の存在、絶対無二。予知予言能力で人々に選択肢を与え協力する、…差し詰め神様みたいなものだよ」

「最強じゃないすか」

「でも戦闘能力はないよ」

「え?」

「コアはあくまで導く存在。保護本能で力を貸しはするけど自分では戦えない」

「へぇ…。それと何より繋がってるのがこいつですか」

「そう。だから今はこんな弱ってるけど、本調子なら僕等は生きてられるか際どいよ。
他の型は無いけど、マスター型は因子の関係でどっかしらに先祖還りの影響が出る。この子の場合目だね。だから解りやすい」

「俺らとそんなに変わんなく見えるのに。人は見かけによらないですねぇ」

「だから保護しなきゃでしょ?」

「確かに捕虜としては最高ですけど…そもそもなんでそんな奴が一人であんなとこに行き倒れてたんですかね」

「さぁ…。仲間割れか脱走か…或いは作戦か」